「グリップなんて、握れればいいじゃないか」——そう思っている選手は少なくありません。しかし、グリップはすべての技術の出発点です。いくら素晴らしいフォームを教わっても、グリップが間違っていると、正しい打点でボールをとらえることができず、思い通りのショットは生まれません。
ソフトテニスにおけるグリップの基本はウエスタングリップです。しかしウエスタングリップと一口に言っても、正しい角度・力加減・指の位置など、細かな点を知らずに握っている選手がほとんど。この記事では、ウエスタングリップを正確に理解し、試合でのパフォーマンスに直結させるための知識を徹底解説します。
グリップがすべての技術の土台になる理由
テニスの技術書のほぼすべてが「グリップの章」から始まります。それは偶然ではありません。グリップはラケットと体をつなぐ唯一の接点であり、すべての技術はグリップから生まれるからです。
打点の安定につながる
グリップが正しければ、体の自然な動きで最適な打点にラケット面が来ます。逆にグリップが誤っていると、正しい打点でとらえようとすると不自然な体勢になり、ミスが増えます。「なぜか特定のコースにしか打てない」という選手の多くは、グリップに問題があります。
スピンとスピードに直接影響する
ウエスタングリップはトップスピンをかけやすい特性を持っています。適切なグリップで握ることで、ボールに対してラケット面が自然に上から前へとスイングでき、トップスピンが自然にかかります。この「自然なスピン」こそが、安定して深いボールを打てるソフトテニス後衛の武器になります。
怪我の予防にもなる
間違ったグリップで長期間プレーを続けると、手首・肘・肩への負担が偏り、テニス肘などの慢性的な障害につながります。正しいグリップは、力が自然な方向に伝わるため、関節への無理な負荷を減らします。成長期の中学生にとって特に重要なポイントです。
ソフトテニスで使われるグリップの種類
テニスには複数のグリップがあり、それぞれ特性が異なります。ソフトテニスで使われる主なグリップを理解することで、自分に合ったグリップを選べるようになります。
✋
ウエスタングリップ(厚いグリップ)
ソフトテニス標準
ラケットをフラットに置き、上から手のひらを乗せるように握るグリップ。手のひらの中心にグリップが当たる感覚です。ソフトテニスの後衛プレーヤーが最も多く採用する標準的なグリップで、トップスピンをかけやすく、高い打点でも安定して打てます。ただし低い打点(スライスショット)や頭上(スマッシュ/サービス)では調整が必要です。
✅ メリット:トップスピンが自然にかかる。腰から胸の高さの打点で最も安定。力が入りやすく威力が出る。
⚠️ デメリット:低い打点(スライス)や高い打点(スマッシュ)では対応しにくい。バックハンドはグリップチェンジが必要。
🎾 向いている人:後衛全般。特にストロークで攻めたい選手。初心者にも最もおすすめのグリップ。
ラケットを縦に立てて握手するように握るグリップ。ウエスタンより少し薄い(コンチネンタル方向の)握り方です。フラットショットが打ちやすく、バックハンドへのグリップチェンジが容易という特徴があります。硬式テニスからの転向者がこのグリップに近い握り方をしている場合が多いです。
✅ メリット:フラットショットが打ちやすい。グリップチェンジが素早い。バックハンドも対応しやすい。
⚠️ デメリット:ウエスタンより打点が前になりやすく、慣れが必要。
🎾 向いている人:前衛や硬式転向者。バックハンドを多用する選手にも向いている。
🔧
コンチネンタルグリップ(薄いグリップ)
上級・特殊
ラケットを縦にして、包丁を持つように握るグリップ。薄い握りのため、フラットサービス・ボレー・スマッシュに適しています。ソフトテニスではサービスや前衛のボレーに使われることがありますが、ストロークには不向きなため、場面に応じたグリップチェンジが必須です。
✅ メリット:サービス・ボレー・スマッシュで本来の威力が出やすい。頭上のボールへの対応が楽。
⚠️ デメリット:ストロークには不向き。初心者には扱いが難しい。
🎾 向いている人:前衛選手のボレー・サービス場面での使用。
ウエスタングリップの正しい握り方|5ステップ
ウエスタングリップを正確に覚えるための5つのステップを解説します。特に「パネルの位置」を基準にすると誰でも正確に握れます。
1
ラケットをフラットな面が上になるよう横に置く
地面や机の上にラケットをフラットに置きます(打面が上を向いている状態)。このとき、グリップ部分の角(エッジ)が見えている状態が「縦型グリップ」の基本形です。この状態のグリップを上から握ることがウエスタングリップの出発点です。
✅ 打面が上を向いた状態でラケットを机に置くイメージ
2
手のひらの中央(生命線の下あたり)でグリップを支える
置いたラケットのグリップを上から手のひらを乗せるように触れます。手のひらの中央部分(生命線の下あたり、「母指球」と呼ばれる親指の付け根のふくらみの少し下)がグリップに当たるように意識します。この「手のひらの面」でグリップを感じることが、ウエスタングリップの基本感覚です。
✅ 手のひら全体でグリップを「感じる」ことが大切。力はまだ入れない
3
指を自然に閉じてグリップを包む
手のひらがグリップに当たった状態のまま、指を自然に曲げて閉じます。このとき全指をギュッと力を入れて握るのではなく、「ふわっと包む」感覚が重要です。小指・薬指・中指の3本を主に使い、親指と人差し指は添えるだけ、というイメージが正確なウエスタングリップに近づきます。
✅ 「卵を握る」くらいの力感。握りすぎると腕が硬くなり打球感が鈍くなります
4
人差し指と中指の間を少し開ける
人差し指と中指の間を少し開けてグリップを握ると、コントロール性が上がります。「トリガーフィンガー」とも呼ばれるこのポジションは、打球時の感覚を手指に伝えやすくし、微妙な打球コントロールを可能にします。慣れないうちは難しく感じますが、意識的に練習することで自然と身につきます。
✅ 人差し指と中指の間に「隙間」を作る。コントロール精度が上がります
5
グリップエンドが小指に当たる位置で握る
グリップエンド(ラケットの端のキャップ部分)が小指の付け根に当たる位置で握ります。この位置は、スイング時に遠心力を最大限に活かせるポジションです。グリップエンドが手のひらの中心に来るほど短く握ると、コントロールは上がりますが威力が下がります。最初は基本位置(小指がエンドにかかる場所)で練習しましょう。
✅ 小指はグリップエンドのキャップにかかるくらいの位置。パワーを最大化できます
グリップの細かな調整と確認方法
グリップは「握ればOK」ではありません。細かな調整と定期的な確認が、試合での安定したパフォーマンスにつながります。
✅ 正しいウエスタングリップのチェックリスト
- ラケットのヘッドが地面と平行になったとき、手のひらがラケット面と同じ向きになっている
- グリップの「平面パネル」が手のひらの母指球(親指の付け根)に当たっている
- 人差し指と中指の間に少し隙間がある(トリガーフィンガー)
- 小指がグリップエンド(ラケット端のキャップ)にかかっている
- 握っても手首が自由に動く(固定されすぎていない)
- ラケットを振ったとき、手のひらでグリップが「滑らない」
- 打球直後も握りが崩れていない(グリップが動いていない)
力の入れ方:「10段階の5〜6」が基本
グリップの力加減は「10段階で5〜6」が基本です。力を全く入れない「1」では当然スイング中にラケットが飛んでしまいますが、「10(最大力)」で常に握っていると腕全体が緊張し、スムーズなスイングができません。「握りすぎず、緩めすぎず」の中間の力加減がベストです。また、インパクトの瞬間だけ少し力を増やす「インパクトグリップ」という技法も効果的です。
パネルの位置でグリップを確認する方法
ラケットのグリップは8面体になっており、それぞれの面を「パネル」と呼びます。ウエスタングリップでは「下から2番目のパネル(ボトムパネル)」に手のひらが当たります。目をつむってもパネルの位置を感じられるまで確認することで、グリップの一貫性が保てます。
🎾 グリップから全技術を体系的に習得しよう
ソフトテニス上達革命
全国優勝監督が教えるグリップの本質
グリップの正しい握り方・使い分け・調整法を映像で詳しく学べます。野口英一監督監修の教材で、すべての技術の土台となるグリップをマスターしましょう。
全国優勝監督が監修
49項目・約4時間収録
グリップの基礎から応用まで
月々2,475円の分割払い対応
オンライン版は即日視聴可能
ソフトテニス上達革命の詳細を見る →
※外部サイト(InfoTop)へ移動します。購入の最終判断はご自身でお決めください。
ポジション・ショット別のグリップ使い分け
試合では一つのグリップですべてをこなすことは難しく、ショットに応じてグリップを使い分けることが上達の鍵になります。
後衛|ストローク
ウエスタングリップ(標準)
トップスピンをかけやすく、腰〜胸の打点で最大威力を発揮。後衛の主力グリップとして最適。
後衛|バックハンドストローク
バックハンドイースタン or バックウエスタン
フォアハンドから1/4回転分バック側にグリップを回す。素早いグリップチェンジが必要。
前衛|ボレー
コンチネンタル or イースタン
フォア・バック両側への素早い対応が必要なため、中間的なグリップが有利。
前衛|スマッシュ
コンチネンタル
頭上のボールを打ち下ろすためにはコンチネンタルが最適。サービスと同じグリップで打てる。
サービス
コンチネンタル〜イースタン
スナップを使ったカットサービスや回転サービスを打つためには薄いグリップが効果的。
レシーブ
ウエスタングリップ(調整)
来たサービスに応じて柔軟に対応。基本はウエスタンを維持しつつ、状況に応じて微調整。
よくあるグリップの間違い4パターン
グリップのミスは見た目にはわかりにくく、長期間間違えたまま練習し続けてしまうことも多いです。以下のパターンに自分が当てはまらないか確認しましょう。
常に最大限の力でグリップを握る選手が多く見られます。これをすると腕全体が緊張し、スムーズなスイングができなくなります。特にスイング中に前腕が硬直し、ラケットヘッドのスピードが落ちてしまいます。また、疲労が早く、テニス肘などの障害にもつながります。
✅ 改善策:「卵を潰さない力で握る」を意識。インパクトの瞬間だけ少し締める「インパクトグリップ」を練習する。
❌
間違い② グリップが打つたびに動く「スライドグリップ」
打球のたびにグリップの位置がずれる選手は、打点が毎回変わり、ショットが安定しません。特に強いボールを受けた後や、ラリーが続いた後にグリップがずれていくことが多いです。グリップテープが古くなって滑りやすくなっている場合も原因の一つです。
✅ 改善策:グリップテープを定期的に巻き直す。打球前後でグリップを確認する習慣をつける。小指側3本指を意識的に使って固定感を高める。
❌
間違い③ 指を全部閉じて握る「パー状グリップ」
人差し指も含めてすべての指をくっつけて握ると、コントロール感が失われます。特に打球の感覚(手に伝わるフィーリング)が鈍くなり、ボールのどこに当たったかが分かりにくくなります。また、手首の可動域も制限されます。
✅ 改善策:人差し指と中指の間に意識的に隙間を作る(トリガーフィンガー)。打球後に感覚を確かめながら練習する。
❌
間違い④ フォアとバックで同じグリップのまま打つ
バックハンドのときもフォアのウエスタングリップのまま打ち続けると、打点が後ろになりすぎて力が入らず、ミスが増えます。特に中学生以上になるとバックへの攻撃が増えるため、グリップチェンジができないと対応範囲が著しく狭まります。
✅ 改善策:バックハンドに入る前にグリップを意識的に切り替える練習をする。「ボールが来る方向を見た瞬間にグリップを変える」条件反射化が目標。
バックハンドのグリップチェンジ
バックハンドを打つためには、フォアハンドのウエスタングリップから「バックハンドグリップ」に変える必要があります。このグリップチェンジをいかに素早く自然に行えるかが、バックハンドの安定に直結します。
フォアハンドのウエスタングリップから、グリップを約1/4〜1/8回転ほどバック側(左方向、右利きの場合)に回したグリップです。グリップ変更後は、手のひらがラケットの「上面パネル(上から2番目のパネル)」に当たる感覚になります。バックハンドでのトップスピン・ドライブが打ちやすい角度です。
✅ メリット:バックハンドで自然なトップスピンがかかる。フォアハンドからの変更量が少ないため素早いチェンジが可能。
⚠️ 注意点:グリップを変えすぎると(1/4以上回すと)打点が不安定になります。小さな変更量で練習を始めましょう。
グリップチェンジのタイミングと練習法
グリップチェンジは「ボールがどちらに来るか分かった瞬間」に行うのが理想です。実際には0.何秒という短時間での対応が求められます。グリップチェンジを鍛える最良の方法は、「素振り」です。フォア→バック→フォア→バックのグリップチェンジを、ラリー中のリズムで繰り返す素振りを毎日行うことで、試合での反射的なグリップチェンジが身につきます。
グリップテープの種類と巻き方
グリップテープはグリップの安定を支える重要な消耗品です。種類・巻き方を適切に選ぶことで、グリップのパフォーマンスを最大化できます。
グリップテープの主な種類
| 種類 |
特徴 |
向いている人 |
交換頻度 |
| ドライタイプ |
さらさら感で汗をかいても滑りにくい |
手汗が多い人・夏場の屋外競技 |
2〜4週間 |
| ウェットタイプ |
しっとり感で密着性が高い |
手汗が少ない人・室内競技・寒い時期 |
1〜3週間 |
| 凸凹(エンボス)タイプ |
グリップ感が強く、少ない力でも安定 |
初心者・握力が弱い選手 |
2〜4週間 |
| 厚手タイプ |
クッション効果でショックが和らぐ |
肘・手首の痛みが気になる選手 |
2〜4週間 |
グリップテープの正しい巻き方
グリップテープはグリップエンド側から始め、少し斜めにして1/3程度重ねながら上に向けて巻いていきます。テープが途切れないよう一定のテンションを保ちながら巻き、最後は付属のテープで固定します。重ね幅が広すぎると厚くなりすぎ、狭すぎると隙間ができて滑りやすくなります。均等な重ね幅を意識しましょう。
グリップテープは消耗品です。「なんか最近グリップが滑りやすい」と感じたら即交換が原則。テープが古くなると滑りやすくなるだけでなく、汗や汚れが染み込んで衛生的にも問題があります。部活中であれば月1〜2回の交換が目安です。
★ グリップから上達の全体像を映像で学ぼう
全国優勝監督の理論で
ソフトテニスを根本から変える
グリップテープの管理からグリップチェンジまで、細部まで丁寧に解説。理論と実践の両面で学べる野口英一監督監修の映像教材で、上達を加速させましょう。
全国優勝監督が監修
49項目・約4時間収録
皇后杯優勝選手の実演映像
月々2,475円の分割払い対応
オンライン版は即日視聴可能
ソフトテニス上達革命の詳細を見る →
※外部サイト(InfoTop)へ移動します。購入の最終判断はご自身でお決めください。
❓ よくある質問Q&A
Q1
ウエスタングリップを正しく握れているか確認する方法はありますか?
A:最も簡単な確認方法は「ラケットを水平に持ったとき、手のひらがラケットの打面と同じ向きになっているか」を確認することです。ウエスタングリップで正しく握ると、手のひらとラケット面が平行になります。また、鏡やスマホで握っている様子を撮影して確認するのも効果的です。コーチや先輩に直接見てもらうのが最も確実です。
Q2
握り方を変えると今まで打てていたボールが打てなくなります。どうすればよいですか?
A:グリップを変えると一時的にショットが不安定になることは避けられません。これは「今まで間違ったグリップに最適化された打ち方」をしていたためです。正しいグリップに変えると、今まで無意識に補正していた体の動きが変わり、慣れるまでに時間がかかります。焦らず、低速・短距離のラリーから始め、徐々に実戦に近づけていくことが最善です。通常2〜4週間で慣れてきます。
Q3
硬式テニスを経験していてイースタングリップが身についています。変えた方がいいですか?
A:ソフトテニスでもイースタングリップは有効で、特に前衛やバックハンドが得意な選手に向いています。必ずウエスタンに変える必要はありません。ただし、後衛としてトップスピンのストロークを武器にしたい場合は、ウエスタンへの移行を検討する価値があります。現在のグリップで何が苦手か(スピンが少ない、特定のコースが打てないなど)を分析して判断しましょう。
Q4
グリップテープはどのくらいの頻度で変えるべきですか?
A:部活で毎日練習している場合は月1〜2回が目安です。週2〜3回の練習なら月1回前後が適切です。明確なサインとしては「滑るようになった」「テープが剥がれてきた」「色が変わってきた(汗で変色)」などが交換のタイミングです。試合前には必ず新品に変えることをおすすめします。グリップテープは安価(100〜300円程度)なので、ケチらず定期交換を習慣にしましょう。