ソフトテニスはダブルスが中心のスポーツです。だとすれば、「ダブルスの戦術を理解しているかどうか」が勝敗を大きく左右することは明らかです。しかし多くの選手は、技術練習には熱心に取り組む一方で、「どこに動けばいいか」「なぜこの陣形なのか」という根本的な戦術理解が曖昧なまま試合に臨んでいます。

ポジションを一つ変えるだけで、同じ技術でも劇的に試合結果が変わることがあります。この記事では、雁行陣・平行陣の本質的な違い、前衛・後衛の役割、そして試合で使える具体的な戦術まで、ダブルスで勝つために必要なすべてを解説します。

ダブルス戦術を学ぶべき3つの理由

理由① 技術格差を戦術で逆転できる

相手より技術が劣っていても、戦術の理解があれば試合で勝つことができます。戦術は「知っているかどうか」であり、知識を得さえすれば即座に活用できます。特に陣形の理解は、今日学んで明日の試合から使えるレベルの内容です。技術習得に年単位がかかる一方で、戦術理解はずっと短期間で結果を出せる武器になります。

理由② チームとしての力が個人技術の合計を超える

2人がそれぞれ50点の技術を持っているとき、戦術なしなら「50+50=100点」のプレーしかできません。しかし適切な戦術連携があれば「50×50=2500点(比喩的な表現)」のシナジーが生まれます。前衛が相手を引きつけている間に後衛が攻撃する、後衛がクロスに打ち続けて前衛がポーチを狙う、など連携の質が勝敗を決めます。

理由③ 相手の戦術を「読む」力が身につく

自分たちの戦術を学ぶことは、同時に「相手が何をしようとしているか」を読む力を養います。「今このポジションから打つとしたら、相手はクロスを狙ってくる」という予測ができるようになると、先手を打った動きが可能になります。戦術の知識はあらゆる試合で生きる財産です。

陣形の種類と特徴

ソフトテニスのダブルスで使われる主な陣形は「雁行陣(がんこうじん)」と「平行陣(へいこうじん)」の2種類です。

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雁行陣(がんこうじん)
ソフトテニス基本陣形
後衛がベースライン付近、前衛がサービスライン付近に陣を構える、縦に並んだ陣形です。雁(かり)が空を飛ぶときに縦に並ぶことから「雁行陣」と名付けられています。ソフトテニスのダブルスで最も標準的な陣形です。後衛がラリーを展開しながらチャンスを作り、前衛がポーチ(前衛が動いて決める攻撃)で得点を狙う、分業制の陣形です。
✅ メリット:コートの広い範囲をカバーできる。後衛がラリーを主導でき、安定感が高い。前衛がポーチを狙いやすい。
⚠️ デメリット:前衛と後衛の間のコース(センター、ストレート)を狙われやすい。前衛の動き次第で守備範囲に穴が生まれる。
🎾 主な使用場面:試合全般。サービスゲーム・レシーブゲームを問わず最もよく使われる基本陣形。
平行陣(へいこうじん)
攻撃的陣形
2人がほぼ同じ高さのポジション(両者がサービスライン付近かネット付近)に並ぶ陣形です。前衛と後衛が横に並ぶため「ダブル前衛」とも呼ばれます。相手に対してネットを支配する圧力をかけ、前衛2人でポーチを狙う攻撃的な陣形です。雁行陣から攻撃に転じた際に移行することが多く、チャンスボールが来たときに形成されます。
✅ メリット:ネット支配力が高く、ポーチのチャンスが増える。相手に大きなプレッシャーをかけられる。
⚠️ デメリット:ロブに対して弱い(2人ともネット近くにいるため)。相手に深いボールを打たれると一気に崩される。
🎾 主な使用場面:相手が浮いたボールを打ったとき、積極的に攻撃しに行くタイミング。
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オーストラリアンフォーメーション
特殊戦術
サービス時に前衛が通常の位置(レシーバーの対角線上)でなく、サーバーと同じサイドに立つ変形陣形です。主な目的は、レシーバーのクロスリターン(最も多いリターンコース)を封じることです。相手がクロスへのリターンに慣れている場合に使うことで、相手のリターンパターンを崩せます。
✅ メリット:相手の得意なクロスリターンを封じる。相手のリズムを崩す意表を突く効果がある。
⚠️ デメリット:後衛側のコートが空くため、相手がストレートに打てば大きなチャンスになる。
🎾 主な使用場面:相手がクロスリターンばかりする場合。スコアが有利なときに試す戦術として有効。

雁行陣の基本と動き方

雁行陣はソフトテニスダブルスの基本中の基本です。しかし「なんとなく陣を敷いている」だけでは効果を発揮しません。前衛・後衛それぞれの動き方の原則を理解することが重要です。

後衛の基本ポジション

後衛はベースライン付近(サービスライン〜ベースラインの間)を主な活動範囲とします。具体的な立ち位置は「ボールが打たれたコースに対してセンターよりやや打ったボール側」が基本です。クロスにボールを打ったら自分もクロス側に少し移動し、次のボールに備えます。ベースラインに張り付いて動かないのではなく、ボールの軌道に合わせて常に動くことが大切です。

前衛の基本ポジション

前衛はサービスライン付近(またはやや前)を主な活動範囲とします。重要なのは「後衛が打ったボールの軌道に合わせてポジションを移動する」ことです。後衛がクロスに打ったら前衛もクロス側(ネットのセンター付近)に動き、ポーチ(横に動いてボレーを決める)のチャンスを待ちます。

🔄 雁行陣の基本的な動きの流れ(サービスゲーム)
1
サーバー(後衛)がサービスを打つ。前衛はネット前に構える
2
レシーバーがリターン。後衛はリターンを打ち返す。前衛はリターンの軌道を見てポーチを判断
3
後衛クロスラリーが続く間、前衛はセンター付近でポーチのタイミングを狙う
4
相手後衛のボールが甘くなった瞬間に前衛がポーチに動いてボレーで決める
5
ポーチ後は後衛がセンター方向に絞り、前衛がポーチ先のコートをカバーしてポジションを入れ替え

平行陣の特徴と有効場面

平行陣(ダブル前衛)は雁行陣の守備的な性格を打ち破るための、攻撃的な陣形転換です。

平行陣に移行するべきタイミング

平行陣は「チャンスが来た!」と判断した瞬間に移行します。具体的には以下のタイミングが適切です。

  • 相手後衛が浅いボールを打ってきたとき(後衛が前に出てネットを取る)
  • 相手が守勢に立たされ、繋ぐだけのボールを打ってきたとき
  • 後衛が相手コートへのアプローチショット(短く落とすボール)を打った後
  • 相手後衛が疲れたり乱れてきたとき

平行陣での動き方

平行陣では2人がセンター付近に近い位置で並び、相手のボールに対して両者がどちらでも対応できる体勢を取ります。特にセンター(ネットの低い部分)を塞ぐことを意識し、相手をサイドに追い込みます。ただし、ロブが上がったときは素早く1人が下がってスマッシュに備えます。

前衛・後衛それぞれの役割

🔵 後衛の役割
  • ラリーを主導してチャンスボールを作る
  • 相手後衛との打ち合いで優位に立つ
  • 前衛がポーチに動ける状況を作る(前衛足元への攻撃など)
  • 前衛のロブをカバーする(前衛が動いた後のコートを守る)
  • サービス力を高め、有利な展開を作る
  • 試合のリズムを主導するリーダーとして機能する
🟡 前衛の役割
  • ポーチのタイミングを常に狙う(受け身になりすぎない)
  • コースを塞いで相手の選択肢を制限する
  • 相手前衛との1対1(ネット際)で圧力をかける
  • ロブが上がったらスマッシュ(またはロブで返す)判断をする
  • 後衛が打ったコースに連動して素早くポジションを移動する
  • 心理的なプレッシャーを相手に与える存在感を示す

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陣形移行のタイミングと判断基準

試合の状況は常に変化します。適切なタイミングで陣形を切り替えられる判断力こそ、上級者の証です。

状況 推奨陣形 理由
試合序盤・お互い様子見 雁行陣(基本) 安定したラリーで相手の傾向を把握することを優先
相手後衛のボールが浅くなった 平行陣に移行 前に出てネットを支配するチャンス。積極的に攻める
こちらが守勢(ロブを多用されている) 雁行陣に戻る ロブへの対応力を高めるため、後衛が深めのポジションを取る
スコアでリードしている重要な場面 雁行陣(慎重に) リスクを取らず堅実なラリーで相手のミスを誘う
スコアで追っている(攻めが必要な場面) 積極的に平行陣を狙う 引き気味では逆転できない。チャンスを積極的に作りに行く
相手前衛が積極的に動いている 後衛がストレートを意識させる 前衛の動きを抑制するためにストレートコースへの意識を見せる

試合で使える具体的戦術10選

理論だけでなく、試合で即使える具体的な戦術を10個紹介します。

1
前衛の「見せるポーチ」で相手コースを変える
実際にポーチには行かず、「ポーチに動くフリ」をして相手のリターンコースを誘導します。相手がストレートに打てばそこにコースを変えさせることができ、ラリーのパターンを乱します。
✅ ポイント:フリだけで効果がある。使いすぎると慣れられるため、本物のポーチと使い分ける。
2
相手前衛の足元(ネット際低め)への攻撃
相手前衛の足元(ネットに近い位置の低いボール)を狙って打つと、前衛はロービングボレーなど難しいショットを強いられます。足元への低いボールは前衛が最も処理しにくいコースです。
✅ ポイント:後衛がラリー中に前衛足元コースへの打ち分けを習得することが重要。
3
クロスラリーの途中で逆クロスに急変する
同じクロスコースに打ち続けてリズムを作り、相手が動きに慣れてきたタイミングで突然逆クロス(相手の背後)に打ちます。動きを予測していた相手には対応が難しく、決定打になりやすいです。
✅ ポイント:同じコースを3〜4球続けてから使うと効果的。使いすぎは禁物。
4
相手後衛の得意でないコース(バック側)に集中する
試合開始時に相手後衛のバックハンドの精度を確認し、バック側が弱いと判断したら積極的にバック側へのボールを増やします。バックハンドに何球も打たせることで、精神的にも圧力をかけられます。
✅ ポイント:試合の最初の数ゲームで相手の弱点を探る観察眼を養う。
5
ロブで後衛を走らせ、前衛をポーチに動かす
相手後衛をサイドに走らせるロブを打った瞬間、こちらの前衛がポーチに動きます。相手後衛が走りながら打つ返球は精度が低くなりやすいため、ポーチのチャンスが生まれます。
✅ ポイント:ロブを打つ前にペアとアイコンタクト(ポーチのサイン)をしておく。
6
センターへの集中攻撃で「どちらが取るか迷わせる」
ダブルスのセンターコース(2人の間)を狙い続けます。どちらが取るか迷いが生まれ、「自分が取る」とコールするのが遅れたり、どちらも遠慮して取らなかったりするミスを誘えます。
✅ ポイント:ネットの最も低い部分(センター)を通るため、ネットミスのリスクも少ない。
7
前衛がストレートをケアすることを「見せる」動き
前衛が意図的にストレート方向にポジションをずらすことで、相手後衛はストレートを封じられたと感じ、クロスに打つ以外の選択肢が狭まります。クロスに打ってくることが分かれば、後衛が準備しやすくなります。
✅ ポイント:前衛がポジションで相手の選択肢を「誘導する」戦術。積極的な受け身の動き。
8
高いロブで相手を後ろに追いやり、ドロップショットで前に引き出す
まず深く高いロブで相手後衛をベースライン後ろまで追いやり、次の球を短く落とします。後ろに走った体勢から前に走り直す動きは非常に負担が大きく、ミスを誘いやすいです。体力差があるときや終盤に特に有効です。
✅ ポイント:相手後衛に前後の動きを繰り返させることで体力を削る戦術。
9
相手前衛にわざとボールを打って追い払う
相手前衛の正面やボディに向けてボールを打ち、前衛に処理させます。前衛は得意のボレー体勢ではなくボディへの対応を強いられ、精度が落ちます。また「自分にも打ってくる」という意識を植え付けることで、前衛の動きを抑制できます。
✅ ポイント:相手前衛を「脅かす」ことでポーチへの動きを抑制する副次効果もある。
10
スコアの流れを見た「第1球の選択」を変える
ゲームの先頭(0-0)と3ポイント負けている状況では、最初のサービスや最初の1球のコース選択を変えます。流れが悪いときは思い切って普段しないコースを選ぶことで、相手の予測を外し流れを断ち切ることができます。
✅ ポイント:「流れを変えたいとき」は意図的にいつもと違うプレーをする勇気が必要。

ペア間のコミュニケーション術

どれだけ優れた戦術を知っていても、ペアとの意思疎通ができなければ機能しません。コミュニケーションはダブルスの根幹です。

試合中のサインとコール

前衛はポーチに動くタイミングを後衛に伝えるサインを決めておきましょう。一般的なサインは「右手を見せる(ポーチあり)」「左手を見せる(ポーチなし)」などです。ただし相手に見られないよう、体の向きを考慮してサインを送ります。

また、スマッシュなどの判断が難しい場面では「俺が取る!」「お願い!」など声を出してコールすることが絶対的に必要です。声を出さないと双方が遠慮してボールを落とすことになります。

ポイント間の声かけの重要性

ポイントが終わるたびに「ナイスショット!」「ごめん!次決めよう!」など短い言葉を掛け合うことで、チームとしての一体感が高まります。特にミスをしたときに自分を責め続けるより、「次の1球」に集中するために声を出すことが、試合全体のパフォーマンスを高めます。

ゲーム間・セット間のミーティング

試合中のゲーム間(30秒〜60秒)に相手の傾向や自分たちの修正点を短く共有する習慣をつけましょう。「相手の後衛はバックが弱い」「前衛のポーチのタイミングが合っていない」など、具体的な改善点を伝え合うことで、試合の中で修正ができます。

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❓ よくある質問Q&A

Q1
前衛はいつポーチに動けばいいですか?タイミングが分かりません。
A:ポーチのベストタイミングは「相手後衛がボールを打つ瞬間(またはその直前)」です。相手が打った後に動き始めると遅くなります。相手の体勢やスイングを見て「今打つ」と判断した瞬間に動き出すことが重要です。最初は「動き始めが遅い」ことが多いため、意識的に早めに動く練習が必要です。迷ったら「動かない」より「動く」を選ぶ積極的な姿勢が前衛には必要です。
Q2
雁行陣と平行陣はどちらが強いですか?
A:どちらが優れているということはなく、状況によって使い分けるのが正解です。雁行陣は安定してコートカバーができ、守備的な面が強い。平行陣は攻撃的でネットを支配できるが、ロブに弱い。試合状況に応じて柔軟に移行できることが最大の強みです。両方を習得し、適切なタイミングで使い分けることを目指しましょう。
Q3
前衛が苦手で後衛ばかりやっています。前衛も練習すべきですか?
A:はい、両方できることが理想です。ソフトテニスでは試合によってポジションが変わることもあり、前衛の役割を理解しているだけで試合の見え方が大きく変わります。ただし、まず得意な後衛を磨くことを優先し、前衛は「前衛の考え方を理解する」という視点で学ぶのが効率的です。前衛の動きを理解することで、後衛からの連携精度も上がります。
Q4
ペアと戦術の考え方が合わずうまくいきません。どうすればよいですか?
A:練習後に「今日の試合で感じたこと」を率直に話し合う時間を作ることをおすすめします。試合中は感情的になりやすいため、冷静に話せる練習後が最適です。「あのときこうすれば良かった」という具体的な場面を振り返ることで、徐々にペアとの共通認識が生まれます。戦術に正解は一つではないため、「2人の形」を作っていくプロセス自体を楽しむ姿勢が大切です。